【データ活用において名寄せは肝。mergencyで速く正しい処理を実現】日本食糧新聞社様インタビュー
食品業界の専門誌を発行している株式会社日本食糧新聞社様。2009年より長らくSalesforceを使用していましたが、今回智歳株式会社が提供する、データ重複の自動除外サービス「mergency(マージェンシー)」を導入されました。データ活用にどのような課題があり、mergencyを導入されたのか。また、その効果と今後の展望は。プロジェクト推進担当の上野峰志様にお聞きしました。
イベント部署以外でのSalesforceが浸透しなかった過去も
芳賀:御社は2009年からと長期間Salesforceを使われています。当時どのような理由で導入したのでしょうか?
上野:弊社は食品の専門紙を発行していますが、新聞以外にも様々な事業を多角的に展開しています。そのため社員数の割には多くの部門があり、それぞれが自部門の顧客を探して営業している状況でした。また、データの管理もそれぞれの部門で行っていたため、他部署にどのような顧客がいるのか把握できない状態だったのです。
そこで、顧客データを一元管理してクロスセルを行いたいという目的からSFA導入を検討し、いくつかの製品を比較した結果、Salesforceの柔軟性を評価して導入しました。
芳賀:では、Salesforce導入時から今回mergencyを導入するまで、御社のデータ活用にはどのような推移がありましたか?
上野:実はSalesforce導入時も各部門のデータを統合してインポートするための「名寄せツール」を外注で開発したのですが、うまくいきませんでした。そもそも弊社のデータがきちんと整理されておらず、各部門で統一した項目・フォーマットがなかったり、姓がない、メールアドレスしかないなど、Salesforceの仕様に合わないデータも多かったのです。いざ名寄せをしてみたものの、正しくできなかったのが実情でした。
また、現場の社員にとっては、Salesforce上から帳票作成やメール配信、レポート出力などの機能が使えるかどうかが重要です。しかし、そういった便利なアプリケーションの開発までは手が回りませんでした。当時はまだAppExchangeのエコシステムも今ほど充実しておらず、またSalesforce管理は私にとって初めての経験だったので、データ統合とシステムの理解だけで精一杯だった状況です。現場の社員からすると、「自分たちの手元のデータをわざわざ入力する面倒な作業」が増えるだけなので、それならば使い慣れたAccessやExcelを使い続けたほうがいいということになってしまいます。
芳賀:Salesforce導入後の浸透は、多くの企業様が悩まれる点でもあります。
上野:ただし、私が所属しているイベント部署は、展示会やイベントを多く開催しており、来場者や出展者の情報など、社内の他部署よりも多くのデータを扱っていました。個人情報を含む様々なデータを業者と連携する際、メールでのやり取りはリスクが高く、情報共有のタイムラグや情報のずれが生じるという課題がありました。
そこで、Salesforceのパートナーポータル(現在のExperience Cloud)やChatterを活用し、データのやり取りをプラットフォーム上で行ったり、展示会情報を業者に直接入力してもらうことで、これらの問題を解決することができました。
その後は試行錯誤しながら、私の部署でSalesforceを使い続けました。展示会の出展社や来場者の情報をSalesforceに蓄積し、MarketoやAccount Engagementも活用することで、展示会運営に大きく貢献できたと考えています。またそれらの食品業界関係者のデータが蓄積されてきたことから、この資産を展示会運営だけでなく、会社全体でのデータ活用に生かそうという機運が高まってきたのです。そこで社内提案会で、顧客情報とIDを統合し、お客様の課題を正しく認識して価値提供や課題解決を行う企業になるべきだという提案資料を提出したところ、それが認められ、全社的なBtoBデジタルマーケティングとデータ活用のプロジェクトが発足。私はそのリードメンバーとして推進する立場になりました。
手動での重複データ処理に限界を感じ、mergencyを導入
芳賀:今回なぜ弊社のmergencyを導入いただくことになったのでしょうか?
上野:展示会は毎年、何万人もの来場者があります。受付で来場者の名刺情報を回収し、データ化した後でSalesforceにインポートしていたのですが、過去に来場した人が今年も来場するということは普通にあるので、重複したデータが一度に大量に発生してしまうという問題がありました。現在はWebからの登録が多いのでかなり減ったのですが、それでも紙の招待券と名刺で入場される方の比率は、例えばITの展示会などに比べれば多いと思います。これまでは私がデータをインポートして整理していたのですが、さすがに限界が来て、何か良い仕組みはないかとずっと探しており、検索から御社のサイトにたどり着いて依頼しました。
芳賀:データが重複すると、お客様対応でも重大な問題に発展するかと思うのですが、御社ではどういった影響が出ていましたか?
上野:幸い、それほど重大な問題は幸い起こっていないのですが、たとえば同じ方へ展示会の招待券を2通送ってしまったり、正確な来場者人数が把握できなかったりと、業務上かなり無駄な作業が発生してしまいました。
芳賀:一つ一つは些細な出来事ことでも、積み重なるとお客様への信頼に関わってくることもありますよね。
上野:そうですね。一つのデータを直したのに、もう一つが直っていなかったりと、データ処理ができていないせいで混乱を招くこともありました。
芳賀:ちなみに、手動でのデータ処理に限界を感じた理由は?
上野:Salesforceにも名寄せ機能はありますが、一度に名寄せできるのは3件までで、展示会来場者のような何千、何万ものデータを一括で処理することはできません。これを人力で行うとかなりの作業負荷となってしまいます。また、名寄せの基準の標準ルールを作ったとしても、リードや取引先責任者のカスタム項目が多数に及んだ場合、一つ一つの項目についてどちらの値を残すのかといったことを全て確認していくのは時間がかかりすぎます。私個人なら過去の経験から判断できても、他の人に任せた場合に私と同じ判断をしてもらうのを求めるのは非現実的です。
また、大手企業ではそういったデータ整備の専任者がいると思いますが、弊社の規模ではなかなか難しい。しかもイベント関連のデータは開催前後で一気に何万件とデータが集まることもあります。
そこでもっとシステム化するしかないという結論に至りました。
データ処理の高速化、業務効率化を実現
芳賀:弊社のmergencyを導入するにあたり、どのようなことを期待していましたか?
上野:担当者がいなくても自動で名寄せされている状態の実現です。
現在は社員が持つ名刺データもSalesforce上に同期しているのですが、それらとWebからの事前申込データや出展担当者、新聞の購読者やメルマガ登録者などの大量のデータを名寄せし、矛盾なく最新データへと上書きすることを期待していました。
芳賀:mergencyは、重複の条件を柔軟に設定できるので、組織にあわせた名寄せができるよう設計しています。実際に導入して、どのような効果がありましたか?
上野:データ処理作業が速くなりましたね。Saasだと作業時間がかかるのではというイメージがありました。でも初めてmergencyを使用した時は「もう終わったの!?」と感じた記憶があって、スピード感が印象的でした。
芳賀:業務の運用にも変化はありましたか?
上野:はい。例えばメルマガの配信やイベントの来場者数も、正しく同期できるようになったことで、正確な件数が把握できるようになりました。
また、かつてはSalesforceでデータを検索した際に重複データがズラッと出てしまうことがありましたが、今ではそういったこともなく、欲しいデータにすぐアクセスできるようになりましたね。
芳賀: 特にデータの整備は本来自分がすべき仕事じゃないことが多い。そういった業務に時間を割かれなくなることも、インパクトが大きいのではないでしょうか。
上野:そうですね。例えば「この人にメルマガの送付を停止したい」となった時に5人分の重複データがあると、全てチェックしてどれが正しいかを判断しなければなりません。そういったことがなくなったのは、業務効率化につながっていますね。
将来的には新たなビジネスへデータを活用したい
芳賀:mergencyに今後期待することも教えてください。
上野:名寄せ条件の設定方法がわかりやすくなると、より使いやすくなると感じました。
弊社の設定では古いデータをマスターレコードしつつ、新しいデータの内容へと更新するようにしていますが、複雑な条件設定でも、非エンジニアの現場の業務担当者がスムーズにできたら嬉しいですね。
芳賀:なるほど。例えばChatGPTのようなAIを活用して、「こんな感じ」という表現をmergencyの条件設定に変換するというのは技術的には可能だと思います。LLMを使用したAIで、システムの入り口のUXを変えるというのは今後普及すると考えています。
上野:それはいいですね。名寄せのサンプルを何件か作って、AIに学習させたり、あるいはサンプルそのものをAIに作ってもらう未来的な使い方も期待しています。
また、これからは新聞の電子版サイトの情報も活用することで、あらたな広告商品の開発などににつなげていければと思っています。
芳賀:電子版サイトの情報の活用についですが、Salesforceと別システムの統合であれば、リバースETLなどを活用し、異なるシステムからSalesforceにデータを取り込み、mergencyで名寄せすることで実現できると思います。弊社の得意分野でもあるので、ぜひ実現させてください。
上野:ありがとうございます。今後の課題としては、データの精度を重要視しています。データ登録時の情報が不確かであれば、名寄せ時に一致判定ができないということにもなってしまいます。名寄せデータに正しい付加価値情報を追加して、データ活用をしていきたいです。
芳賀:かしこまりました。今後とも御社のデータ活用をぜひお手伝いさせてください。
(構成:菱山恵巳子)