【"Heroku × Tableau"でデータが統一されたことで、経営の質も向上】株式会社エルテス様インタビュー
企業が抱えるデジタルリスクを予兆・検知・解決するソリューションを手掛ける株式会社エルテス様。今回Praztoでは、エルテス様にHerokuを使用したTableauのダッシュボード導入支援を行いました。
これまで、Salesforceをはじめとした様々なシステムを使用してデータを管理していたというエルテス様。今回、なぜTableau導入に至ったのか。また、Tableauを導入したことで感じた大きな成果とは? プロジェクトを担当した、株式会社エルテス・奥村様と赤田様、Prazto代表の芳賀と大竹の対談形式で語ります。
複雑化し、見えづらくなっていた事業別利益
芳賀:今回、Herokuを使用したTableauのダッシュボード構築のご支援をいたしました。「管理会計」と「予実管理」の2種類のダッシュボードを導入しましたが、そもそも御社でどのような課題があったのでしょうか?
奥村:どちらのダッシュボードも、数字の「見える化」を目的としていました。弊社はデジタル化によって生じる新たなリスク対策を提供しています。デジタル社会の変化に合わせて、新たなサービス開発を行っています。そのため、領域ごと、サービスごと、営業担当ごとにどれだけ利益を上げているのか、見えづらくなってしまったのです。そうなると、どこに投資すべきかという経営判断も難しくなりますよね。それらの課題を解決すべく、経営層向けの管理会計のダッシュボード構築に至りました。
また、M&Aによるグループ会社が増加に合わせて、グループ全体の経営状況の可視化にも取り組みました。
赤田:これまで弊社では様々なシステムを使っており、あちこちにデータが散らばっている状況でした。いざ数字が見たいと思っても、誰かが手作業で資料を作ることから始めなければなりません。しかも作る人によって参照するデータソースが異なるので、できあがった資料の数字の微妙に違う…という問題もありました。
芳賀:弊社のお客様でも、同じような課題を抱えていた企業様は多くいらっしゃいます。これまで経営層向けの数字資料を作る時は、どのようにデータ集計をしていたのでしょうか?
赤田:基本的には私がデータ作成を担っていました。同時期に社内で同じようなデータ作成依頼が重なることもありましたね。例えば、上層部から「売上の集計が見たい」と言われデータを作成した2週間後に、別の部長から同じデータの集計依頼が来ることも。それも社内で統一したデータを見ることができれば解決するのに、とも思っていました。
芳賀:ちなみにデータ作成にはどれくらいの時間を要していたのでしょうか?
赤田:「受注額を見たい」といったSalesforceを見るだけで作れるレベル感であれば、数時間です。ただ、「企業別の売り上げと、それに対する費用」などの複雑なものになると、3営業日はかかっていたかと。データソースが複数のシステムにまたがるので、まずはデータのかたちを揃え、目視でチェックする必要もあったので。
奥村:そもそも管理会計データの方は、手動での作成は不可能でしたよね。
芳賀:今回のデータ統合ではHerokuは適したプラットフォームだと思っています。クラウド型のSaaSだけでなく、貴社の社内システムやOBICのデータが管理されているSQL Serverと連携する必要があったのですが、HerokuのPrivate SpacesでVPN接続することできたので、特に問題なく直接接続することができました。
社内共通のデータ指標ができたことは、ビジネスにも大きな影響
芳賀:では実際にTableauのダッシュボードは御社の課題解決につながりましたか?
奥村:Tableauが導入されたことで、社内で統一の指標ができたことは、間違いなく大きな成果です。
これまでは、例えば各営業部が「うちは粗利が高いです」と言っても、その粗利の計算が部署ごとに違っているなんてことも。各部署、さらには各メンバーが同じ数字をイメージして議論できる土台ができたことで、経営の質をさらに向上させることができたと実感しています。
また、事業部長などの幹部層が、いちいちデータを作る必要がなくなったことも非常に大きい成果です。すでにデータが集まっている状態なので、いつでも数字を見ることができる。毎日見るからこそ小さな変化に気が付けることもあると思います。今回のダッシュボード導入が、結果的にビジネスに反映されていくのではないかと感じます。
芳賀:リリースして間もないですが、赤田さん個人へのデータ作成依頼は減りましたか?
赤田:そうですね。依頼自体は実際減っています。また、これまでは依頼時に、何を基準に、どんな計算でデータが欲しいのかを、私からヒアリングをしていました。今ではその必要もなくなり、Tableauのダッシュボード上で「このデータです」と言えるようになったのはコミュニケーションが楽になりましたね。
芳賀:弊社も統合的なプラットフォームを構築したいと思っていたので、その成果がすでに出ているのはとても嬉しく感じます。
一人ひとりがデータに責任を持つように
芳賀:現状のダッシュボードに関して、今後、改善の余地があるとしたらどんな点でしょうか?
奥村:まさに御社に新しく依頼していることでもありますが、現場へのブレイクダウンです。今回は、経営層向けのデータ算出を想定してダッシュボードを構築いただきました。サービス全体としてのデータの可視化はできたので、今後は営業部単位での損益の可視化にも対応していきたいです。となると、現場もデータを見る機会も増えると思うので、現場が確認する指標なども検討していきたいと考えています。
同じ数字を見ながら議論・判断することが社員に浸透することは、とてもポジティブな現象です。
そのために、現状はまだ粗い状態のSalesforceのデータ入力も改善したいですね。データを見て判断する、ということが体感できれば、データの重要性も浸透して、正しいデータ入力につながるかとは思います。
赤田:それで言うと、すでにTableauを導入したことで、「自分たちが入力したデータがそのまま数字になる」ということが理解され始めたと感じています。これまではデータ作成時に「この数字、入力ミスだな」と思ったら私の方で微修正を加えていました。しかし、今ではその最後の砦もなく、入力した数字がそのまま経営層に届きます。一人ひとりがデータに責任を持てるようになったことは、良いことだと思います。
奥村:部署ごとの費用がどの案件に紐づくかが可視化されたので、社内のガバナンスも高まりましたよね。「この費用本当に必要なのか」「正しい承認ルート通っているのか」という意識が高まったと感じます。
つまり、Salesforceが正しく使われていると、中長期的な視点で稟議の質や社員の思考力も上がり、会社の底上げにつながると思います。データでエビデンスが残り、しかも誰にでも見られるようになったというのは、とても重要なことです。
芳賀:おっしゃる通りで、ダッシュボードでデータが可視化されることがゴールではありません。それが会社の利益につながることで意味を成します。御社の場合、すでにとても良い兆候が出始めているというのは、嬉しいですね。
赤田:Tableauの精度を上げるために社内のデータに対する意識が変わる。これは会社の成長にもつながると思うので、今後が非常に楽しみです。
弊社のことを理解した上で積極的にご提案いただけたことがとてもありがたかった
芳賀:ダッシュボード開発中、弊社の対応はいかがでしたか?
赤田:一言で言うと感謝しかありません。弊社としても初めての取り組みだったので、どこから手を付るべきかわからない状況からのスタート。だからこそ、御社の方から「こういう見え方が良いのではないか」「こういうイメージはどうか」と、弊社のことを理解した上で積極的にご提案いただけたことがとてもありがたかったです。
芳賀:ありがとうございます。Tableauを含むシステム開発において一番重要なのは、コミュニケーションだと思っています。その点、御社はフランクにコミュニケーションをとっていただき、ご意見もきめ細やかにいただけたので、案件をスムーズに進行することができました。
また、要件定義の資料も丁寧にドキュメントにまとめてくださっていたので、迷いなくダッシュボードの開発に取り掛かることができました。
芳賀:様々なダッシュボードがある中でもTableauは自由度が高いサービスでもあります。実際に使ってみて、Tableauについてのご評価もお願いします。
赤田:まだ使い始めて日が浅いから思うことでもあるのですが、Tableauは自由度が高いからこそ、慣れるまでは難易度が高いツールだなと。でもその分、希望通りの見せ方を実現できるのは、Tableauの魅力だと思います。
芳賀:たしかに、Tableauは使い続けることで深みが出てくるツールではあります。カスタマイズ性が高いので、どんどん使い込んでいただくことで、御社に合わせたダッシュボードにブラッシュアップしていただけたらと思います。
Tableauで、エルテスの事業をもっと深掘りしたい
芳賀:では、Tableauを使ってどんなことをしていきたいか。今後の展望も教えてください。
奥村:個人的に可能性を感じているのは、二点あります。一点目は、エルテスの事業をもっと深掘りするための営業のKPI、プロダクトの収益率を可視化すること。数字という正しい現状をもとにした課題解決をサポートする使い方をできればと思っています。
二点目は、データを基にした経営をグループ各社にも波及させること。今後、グループ各社でも事業が増えた時に「何の事業で儲かっているのかわからない」といった問題に陥るのではないかと思っています。そうなった時、今の弊社の取り組みを移植し、支援できれば。Tableauには、それを実現する可能性があるのではないかと感じます。
芳賀:最後に、弊社に期待していることもお聞かせください。
奥村:今回のプロジェクトでは、私は経営サイドの視点、赤田は社内のデータ整備の視点を持っていました。しかし、その二つの視点だけでは納得いく成果は生み出せません。そこにPraztoというプロフェッショナルが参画していただいたことで、高い水準のモノづくりができたと思います。
Excelを使って内製でデータ活用をすることも可能ですが、専門家にお願いしたことで、時間をショートカットしながら成果を高めることができました。Tableauのスペシャリストとして、これからもよろしくお願いいたします。
芳賀:今回のプロジェクトの一番の成果は、御社内にTableauを使って分析する基盤ができたことです。これから社員の方もどんどん巻き込みながらTableau活用をしていただければ、より大きな成果が生まれるのではないかと思っています。そのお手伝いを、ぜひ今後もさせてください。
(構成:菱山恵巳子)